スーツを着た悪魔【完結】
まゆを酔わせたかったのか、サラリーマンは大げさにはやし立て責めてくる。おまけにその向こうに座っていた女の子にも同じように責められてしまった。
「でも……これ、とてもおいしいワインですよ。一気で飲んじゃうなんてもったいないです」
「もったいないって……貧乏くさいね。どうせこれ、豪徳寺さんが払うんだし。彼にしたらたいした金額じゃないでしょ」
「そうそう。はした金」
「――」
貧乏くさいって……はした金って。
まぁ、私は根っからの貧乏性かもしれないけれど……否定はしないけれど。
それはワインに失礼じゃないだろうか。
あと、深青さんにも……。
まぁ、彼にとってはたいした金額ではないというのは同意だけれど。
そう思ったけれど、無口な正確のまゆは、言い返すことは出来なかった。
「――それ、おいしい?」
「えっ?」
カラオケの騒々しいBGMの中でも、彼の声は凛と響く。
顔をあげると、テーブルの向こうの豪徳寺深青が、優しげな表情でまゆに話しかけてきていた。