スーツを着た悪魔【完結】
「阿部さん、帰らなくてもいいんですか?」
「いいのよーう。旦那は単身赴任だし、実の親と同居してるしね。たまには私も、パーッとはじけなきゃ、ストレスで死んじゃうもん!」
部屋に入るとすぐに、阿部を含め同世代数人が、怒涛の勢いで曲を入れ始める。
彼らはすでにべろんべろんで、ほぼ素面のまゆのことは目に入らなくなっていた。
やっぱり帰ればよかったかな、と思いつつも、出入り口に近いソファーに腰を下ろす。
同時に、テーブルを挟んだ向こうに深青が腰を下ろすのも見えた。
に、しても。深青とまたカラオケにくることになるとは思わなかった。
だけど合コンよりずっといい。気が楽だ。
最近はやりのアイドルソングをメドレーで踊る集団に、手拍子をしていると――
「おい」
いつの間にか隣に座っていた深青が、そっと声を掛けてきた。