スーツを着た悪魔【完結】
「あの、支払いは……」
「してるから気にしなくていい。帰ろうぜ」
深青は、ソファーから立ち上がったまゆの手を取り、ビルを出る。
手……?
驚いた。どうして急に、手なんか……繋ぐの。
驚いたまゆの体が当然のごとく強張る。
けれど――
当然なのだけれど平田に触れられた時のように、ゾッとするはずもなく。振り払えるはずもなく。
その内、二人は自然と半身が触れ合うほど近づき、沈黙に耐えられなくなったまゆは、しどろもどろになりながらも深青を見上げた。
「あのっ……」
「ん?」
おそらく深青が気を使ってくれているんだろう。
ゆっくりと歩いて、まゆの声に耳を傾けてくれる雰囲気がある。
焦っていた気持ちが、少しだけ落ち着いた。