スーツを着た悪魔【完結】
「――」
「まゆ?」
怪訝そうに首をかしげ、顔を覗き込んでくる深青から目を逸らし。
「ううん、なんでもない」
まゆはにっこりと笑顔を作り、深青の手からコンビニ袋を取ると、ペコッと頭を下げた。
「ごはん、ごちそうさまでした。送ってくれて、ありがとう」
「まゆ……」
「じゃあ、おやすみなさい」
「――おやすみ」
くるりと背中を向け、階段を駆けあがるまゆの背中を、深青は複雑な気持ちになりながら見あげる。
玄関ドアが閉まり、それから数秒して、キッチンの側らしい小さな窓から明かりが漏れるのを確認して、深青も来た道を戻ることにした。
「お前の『なんでもない』はまったくあてにならねえんだよ……」
ぽつりとつぶやいた言葉が夜に溶ける。