スーツを着た悪魔【完結】
「本阿弥光悦って……教科書に載ってる?」
「ああ。大海に浮かぶ三つの築山……三つ巴は『過去』『現在』『未来』を現し、全ては途切れることなく連続し、流転するという考えのもと作られているんだとか」
「すごいのね……そんなものが残っているなんて……」
感心しながら、深青を見上げ――
ふと気づいた。
深青は京都が初めてだと言った私のために、京都の一部分を見せようとしてくれているんだって。
そのことに気付くと、なんだか鼻の奥がツン、と痛くなった。
「――まゆ?」
急に黙り込んだ彼女を不思議に思った深青が、顔を覗き込もうと顔を近づけ、
「あ……」
まゆは潤んだ瞳をぱちぱちと瞬かせる。