スーツを着た悪魔【完結】
深青とまゆは無言でお互いを見つめていた。
その一瞬、深青は、まゆの漆黒の瞳の中に、宇宙が見えたような気がしたのだ。
そしてまゆも深青の澄んだ茶色の瞳の中に、言葉では伝わらない何か、強い思いを感じ、それが何かもわからずに、戸惑っていた。
女の目の中に宇宙を見たといえば、人は馬鹿だと笑うだろうか。
けれど彼は直感で知った。
愛すると言うことは奇跡で――
この出会いも、また気の遠くなるような運命の糸の先の偶然で、必然なのだと。
「まゆ……」
彼女の名前を呼ぶと、幸せな気持ちになると同時に、思い通りにならないもどかしさに胸が苦しくなる。
このまま二人でどこかに消えてしまえたらいいのにとさえ思う。
触れなければ息が出来なくなりそうで――
抱きしめたい。
強い思いにかられて、深青の手がまゆに伸びる。