スーツを着た悪魔【完結】
彼女は深青たちが降りてきたガラス戸を大きく開け放ち、仁王立ちして二人を見下ろす。
「――遊んでいるつもりはないんですが」
苦笑する深青を見て、
「それはあなたが決めることではないでしょう! そう見えるって言ってるんですからねっ!」
より一層気色ばむ老女は、深青の横で固まっているまゆを見据え、またさらに眉を寄せる。
その顔ときたら、深青にすれば昔からよく小言を言ってくる鬼ババアでしかないのだが、まゆからするとさすが豪徳寺一族としかいいようのない迫力に満ちていて、息も出来なくなりそうだった。
「なんですか、その娘は」
「まぁ……秘書です」
肩を抱いて、じっと見つめて、秘書もひったくれもないのだが、彼女相手にはとりあえずそう言うしかない。