スーツを着た悪魔【完結】

そんな反抗的な深青の気配を敏感に感じ取った老女は、顔色を変え言い放つ。



「あなたって人は……そんな、どこの誰だか知らない女を連れて来て、こっちが用意するお見合いには見向きもしない! 父親も父親なら子も子ね!」



父親?


どういうことだろうと、まゆが深青を見上げると同時に、繋がれていた手に力がこもる。



「お言葉ですが……両親を侮辱するつもりなら、いくら年長者のあなたでも――」



気色ばんだ深青が声を荒げそうになった瞬間

「――深青」

低い、けれど決して大きくない声が響き、その場にいた全員が雷に打たれたように息を飲んだ。



深青の緊張が、まゆにも伝わる。

彼の視線を追いかけると、和服姿の男性がこちらをジッと見つめていた。




< 336 / 569 >

この作品をシェア

pagetop