スーツを着た悪魔【完結】
本屋さんに来るのって久しぶりかも……。
積み上げられた雑誌の見出しや、話題のベストセラー。目新しい装丁など、見ているだけで楽しくなってくる。
棚の間を順番に眺めていたまゆだったが――
「あ……」
一冊の本の前で、足が停まった。
岩波少年文庫
C.S.ルイス作
ナルニア国物語「ライオンと魔女」
ドキン、と心臓が跳ねる。
私が小さいころ……悠ちゃんが読んでくれた本だ。
悠ちゃんは本を読むのがとても上手だったから、自分で読むよりもずっと、彼に読んでもらうのが好きだったっけ。
戦時下、田舎に疎開した四兄妹たちの不思議な冒険譚――
偉大なるライオン、アスランの物語。