スーツを着た悪魔【完結】
先に車に戻ったまゆは、バッグの中から白いハンカチを取り出し、そっと涙をぬぐい、唇をかみしめる。
私はなんて面倒くさい女なんだろう……。
彼女の胸にうずまいているのは、ひどい後悔だった。
彼はただ昔話をしただけ。
私が手にしかけたナルニア国物語を見て、幼いころの思い出を話してくれただけ。
なのに私は、そんな彼の幸せな子供時代を想像しただけで、羨ましくて、死ぬほど妬ましくなってしまった。
そしてそんな自分が情けなくなって……逃げ出した。
どうして私はこんななんだろう。
自分で自分が嫌になる。
本当に嫌いでたまらない。
自分という存在を心底疎ましく思うのは、こういう時だ。
いっそ消えてしまいたいと思ってしまう……。