スーツを着た悪魔【完結】
そもそも壁を作ったのは私。
彼には何も話さないと決めたのは自分だ。
どれだけ優しくされても、包み込むような愛情を向けられても、いや、深青の気持ちを感じれば感じるほど、全てを明かすのなら死んだほうがマシだとすら思うのに
それなのに、ふとした瞬間、彼の前で泣いてしまうのは、結局「深青」という存在に甘えているからなのかもしれない。
ううん、それだけじゃない。
泣いたり笑ったり、怒ったり、そういう感情を出すことも、今までずっと出来ないことだと諦めてきたのに、深青といると、心がむき出しになってヒリヒリして――
声を出さずにはいられなくなるんだ。
しばらくして、深青が車に戻って来た。
彼は無言でまゆの隣に乗り込み、車は当初の予定通りホテルへと走り始める。
「さっきはごめんなさい……」
ホテルに着き、並びの部屋の前で、まゆは深青に頭を下げる。
本当は車の中で謝りたかったのだが、なかなか言い出せなかった。