スーツを着た悪魔【完結】

「あ、あの、私、ちょっとそこでお野菜買ってくるねっ。深青はお留守番してて!」



急に恥ずかしくなったまゆは、バッグから財布をつかみ出すと、窓の外の景色をしげしげと眺めている深青の背中に叫び、返事を聞かないまま部屋を飛び出す。



「え? あ、ちょっと俺も一緒に……」



あっという間に飛び出していったまゆを、深青は二階の窓から見送っていたが――

確かに『すぐそこ』の八百屋へ向かう姿を見て、ホッと表情を緩め、目を細める。



「なんつうか……新鮮だな」



過去、深青が付き合った女たちの中には手料理を食べさせようなんてタイプはおらず(むしろ深青に少しでもよいレストランに連れて行ってほしいとねだるだけだった)こんな風に八百屋に走る女は初めてだった。



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