スーツを着た悪魔【完結】
「怖く、ない……」
ちゃんと出来るだろうか。
わからない。だけど深青に触れられたい。
激しく揺れる二つの心に戸惑いながら、まゆは深青の首の後ろに腕をまわしたまま、言葉を続ける。
「でも、いいって言うまで、脱がさないで……電気も、消して……」
「――わかった」
深青は自分の首の後ろに回っていたまゆの手を下ろすと、立ち上がって電気を完全に消す。
それから緊張で固くなり、敷き布団の上にぺたんと座っているまゆの肩に両手を置き顔を寄せると、額に口づけ、抱きしめた。
ぬくもりを分け合うように抱き合ったのはどのくらいだっただろうか。
深青から放たれるすみれの香りはどこか毛羽立ったようなまゆの心を落ち着かせてくれた。
「深青、いい匂いする……」
「自分じゃよくわからないけどな。家族みんなこんな感じだし」
「ふふっ……そっかぁ……フレグランス、いらないね」