スーツを着た悪魔【完結】
何もかも見通してしまいそうな彼女の大きな瞳に見つめられて、まゆはどっと汗をかきながら首を振った。
大変だ。
このままでは恋人にさせられてしまう!
「あ、あの、わたし、その……」
「――ごめんなさい。貴女の前で兄の悪口を言うなんて、よくなかったわ」
「えっ……」
「あのね、兄は確かにその……ちょっとプレイボーイなところがあったけど……あなたのようなタイプの女性は初めてよ。確かに本気なんだと思うわ」
「いや、そうじゃなくて……」
どうしよう。どんどんそういうことになってしまっている。
「私の名前は豪徳寺未散。未だ散らず、と書いて、みちるよ。よろしくね」
彼女はそれまでの鬼のような形相を変え、まゆに微笑みかけてくる。
未だ散らずと書いて、ミチル……
なんと美しい名前だろうか。
じゃ、ない。
そうじゃない!