スーツを着た悪魔【完結】
「で、子ウサギちゃん。あなたのお名前は?」
「は、はい、澤田まゆと申します」
もう、絶対名乗るものかと思っていたのに、未散に尋ねられると素直に返事をしてしまっていた。
後悔しても遅い。未散には女王様の風格がある。きっとその風格に口を割らされたのだ。
現実逃避だとわかっているけれど、まゆはそんな馬鹿みたいなことを考え、内心ためいきをつく。
「大学生?」
兄の隣に腰を下ろす未散。
おそろしく長い脚が窮屈そうに折りたたまれるさまをぼーっと見ながら
「いいえ、働いています、けど……」
と、首を振った。
「けど?」
「今月いっぱいでリストラに……」
正直、こんなことなんて言う必要はどこにもない。
だが、言ってしまった。全ては未散のにこやかに見せてどこか押しの強い雰囲気のせいに違いない。
そうだ、そうに違いない――