モカブラウンの鍵【完結】
「涼太、吹きこぼれてる!」


幸司さんが迎えに来る前までに、料理を完成させないといけない。

昼を食べてから始めたクリームパスタ作り。

今、パスタのゆで方を教えている最中。

吹きこぼれだけで騒げるって、すごい。


「こういう時は、水を少し注すんだよ。ほれ」


水の入った計量カップを渡した。

恐る恐る水を鍋に注ぐと「本当だ」と言って、感心している。


姉ちゃんがエプロンをして、キッチンにいることが不自然すぎる。

しかも自分のエプロンを持っていない。

自宅にも実家にもないらしい。

「エプロンはしない主義なの」と言っていたけれど、それは『家事をしない主義』の間違えだろう。

午前中は使いやすそうなキッチングッズを、俺の見立てで買った。


真新しい花柄のエプロンをした姉ちゃんが「ねえ、涼太。パスタの量、多くない?」と聞いてくる。

幸司さんの分も作っています、とは言えない。

約束だし。

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