モカブラウンの鍵【完結】
「あっ、ちょっと待ってください」

横にあった自販機に小銭を入れて、ボタンを連打する。

自販機からゴトッ、ゴトッと鈍い音が2回した。


「はい。どうぞ」

「えっ。何で?」

「この前、ブルーマウンテンを飲んでる佐伯さんを見てたら、何か違う気がして。

佐伯さんはこっちの方が似合いますよ。

それに、久しぶりに飲んでみたくなって、コーヒー牛乳」


缶のプルタブを開けて、牛乳の味が強いコーヒーを飲む。


「美味い。堪にはいいかもしれませんね。甘いコーヒーも」

後ろを歩く佐伯さんに振り返りながら言った。


そこには缶コーヒーを開けもせず、ただ握って、一筋の涙を流していた。

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