魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
「なあチビ、恥ずかしがんなよ。しわくちゃだからなんだっていうんだよ」


コハクに顔を見られたくないラスが顔を逸らして窓の方をずっと見ていたので、しびれを切らしたコハクは笑いながらベッドに腰掛けてラスを抱き起して抱きしめた。


…枯れ枝だ。

身体からは水分がほとんど失われて、綺麗だった金の髪にも艶が無く、身体も脆い。

日に日に老いてゆく、と筆談で教えてくれたラスは不死故に死ぬことはない。

だから今――余計につらいはず。

死にたくても死ねなくて、以前の自分と同じように苦しんだはずだ。



「…チビ…俺はさあ、不死の魔法が失敗したらこうしてチビを介護する覚悟だったんだぜ。今のチビの姿を醜いとも思ってねえし、チビが…寿命で俺の元から去るまでずっと傍に居るつもりだったんだ。だから顔をよく見せてくれよ。どうせすぐ元通りになるんだからさ、今のチビの姿は今しか見れねえし」


「……ぉ…ぁ……ぅ…」



――コハク、と呼んでくれたラスの身体が壊れないように優しく抱きしめて額にキスをしてやると…突然目の前にブラックホールのような真っ黒な穴が出現した。

即座に身構えてラスを背中に庇おうとしたが、それよりも1歩先にその穴から出て来てラスの腕を掴んだ男――ゼブルは血まみれの姿。


「ああ…こんな姿でもあなたは見つけてしまったのか」


「ゼブル…!てめえ!チビを元に戻せ!」


「ふぅ…死神に追いかけ回されて私もつらいんですよ。コハク様…まだ終わりません。まだまだ、これからだ」


「…!……!コ……!」


恐怖に震えた瞳でゼブルを凝視するラスを荷物のように肩に担いだゼブルが新たに作った真っ黒な穴に身を投じて姿を消した。

あっという間の出来事で――ルゥが大きな声で泣き出すまで動けなかったコハクは、最初にゼブルが作り出した穴から出て来たデスに肩を叩かれるまで放心していた。


「……魔王……一緒に…魔界…行く……」


「…デス…!っくしょ…行けばいいんだろ!魔界なんか…粉々にしてやる…!」


再びマントを着たコハクはルゥを抱っこしてゼブルを追いかける。


ラスは自分以外の男に触れさせない。

ゼブルを殺して魔界を消し去って――再びラスと幸せな毎日を送るのだ。


そのためなら、どんな努力も厭わない。
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