魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
ただ、たどたどしいよちよち歩きでついて来るルゥが一緒なので、かなり時間がかかる。

コハクがルゥを抱っこして歩かないのは、ラスと離れている数か月の間にルゥがどれだけ成長したかをラスに見せてやるためだ。

顔を真っ赤にして必死に踏ん張って歩いているルゥは掴まり立ちも卒業して、ミルクも卒業した。

グリーンリバーに戻って来てからルゥをまともに抱っこしていないラスは、成長した我が子の姿に心を動かされて階段に差し掛かったところで脚を止めると、中腰になってルゥに手を差し伸べた。


「ルゥちゃん、頑張って」


「うぅううー、まー。まー」


「ルゥちゃん、もうちょっとだよ、頑張れ頑張れ」


コハクに水色の可愛い前掛けとベビー服を着せてもらっているルゥは可愛らしく、ラスの元までたどり着くと胸に飛び込んでへにゃっと笑った。

さすがはコハク似というか…ぽよぽよのラスの胸に触って果てしなくでれっとした表情を見せるルゥに若干嫉妬したコハクは、やはりルゥが将来とてつもないライバルになりそうな気がしてため息。


「ルゥ、抱っこしてもらえて良かったな。走り出すのも時間の問題だぜ、チビ体力つけとけよ」


「うん、わかった。お腹の中の赤ちゃんが大きくなるように沢山食べなきゃ」


「そこは俺に任せとけ。チビをぷくぷくのぷよぷよにするためにがっつりスタミナのつくもん作ってやるからな」


ずっしりと重いルゥを抱え直していると、コハクがルゥを抱っこしたラスごとひょいと抱きかかえた。

こんな細腕なのに魔法でも使っているのか、といつも思うほどにあっさりと重たいものを持つコハクに目を丸くしていると、ようやく調子を取り戻してきたラスの様子に嬉しくなったコハクは、螺旋階段を上がって屋上に着くと、ラスの声を上げさせることに成功する。


「わあ…!綺麗!花弁が…」


「だろ?今満開でいい時期なんだ。チビに見てもらえて良かった」


コハクが改良を加えて作った金色の花は、雪のような花吹雪となって夜空を金色に染め上げていた。

強風が吹くことのないグリーンリバーだが、そよ風に乗ってゆっくりと街に降り注ぐ花弁は幻想的な世界を醸し出し、下ろしてもらったラスはルゥを抱っこしたままくるくると回って大喜び。

コハクは頬を緩めてラスを奪還できたことを喜び、そして少しずつでもいいからラスの心の傷を一緒に癒していこうと固く誓う。

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