魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
「ソリは貸せん。とっとと戻れ」
少年に言われた小屋に着いたコハクは、そこで番をしている男の老人に一蹴されてまた違和感を覚えていた。
“とっとと戻れ”とは…一体どこに?
ここから出て行けという意味なのか?それとも――?
「コー、どうしよう…歩いていけると思う?」
「チビは長時間歩いたことねえし無理だろ。仕方ねえな、馬車で行くか」
「でも…ここの人たちなんか態度が変だし…ホルンの人たちもこんなんだったら私いやだよ。コーが楽しくないでしょ?」
「んー、俺はチビが楽しかったらなんでもいいけど。逆にちょっと気になるし行こうぜ。俺こういう態度されるの慣れっこだからさ」
ラスがコハクの腕にひっついて離れなくなった。
心配して気遣ってくれるラスの肩を抱いて小屋を出たコハクは、老人がしわくちゃの顔で山の坂を上り始めた自分たちをまだ見ていることに気付いていたが、ここではこれ以上の収穫がなさそうなので先を急ぐ。
山の空気はひんやりとしていて涼しく、山の頂上は雪がかぶっているのでそこまでは馬車に行くことにして、村が見えなくなったところでぱちんと指を鳴らして馬車を出した。
乗り込んだ後はどこか考え事をしているコハクが新婚旅行を楽しめなくなったのでは、と思ったラスは、眠っているルゥの額にキスをして顔を上げた。
「コー…」
「なーんだその顔は。心配すんなって、あそこは絶対チビが喜ぶようなことばっかだぜ。工芸品もそうだけど、年中雪が溶けねえからいつでも雪遊びできるし」
「じゃあ楽しくなかったらすぐここを出ようね。コーの赤い瞳とっても綺麗で大好きなのに…みんなどうしてその良さをわからないんだろ…」
「ま、昔から赤は不吉だって言われてることだしな。田舎に行けば行くほどそう思ってる奴らは多いんだ。ホルンでまたチビを嫌な思いにさせたくねえから目の色は変えとくか」
コハクが瞳を閉じて両の瞼に人差し指と中指をあてて開いた。
するとコハクの瞳の色は落ち着いた濃紺の色になり、ぐっと落ち着いた印象になったコハクにラスが抱き着いて頬を撫でまくる。
「コー、いつもと全然違う!かっこいいよ、素敵。今のコーも好き」
「マジでか。これだと多分チビに迷惑かけねえと思うし、楽しもうな」
「うん!」
ラスを優しく抱きしめる。
不吉なものからラスを守るように――
少年に言われた小屋に着いたコハクは、そこで番をしている男の老人に一蹴されてまた違和感を覚えていた。
“とっとと戻れ”とは…一体どこに?
ここから出て行けという意味なのか?それとも――?
「コー、どうしよう…歩いていけると思う?」
「チビは長時間歩いたことねえし無理だろ。仕方ねえな、馬車で行くか」
「でも…ここの人たちなんか態度が変だし…ホルンの人たちもこんなんだったら私いやだよ。コーが楽しくないでしょ?」
「んー、俺はチビが楽しかったらなんでもいいけど。逆にちょっと気になるし行こうぜ。俺こういう態度されるの慣れっこだからさ」
ラスがコハクの腕にひっついて離れなくなった。
心配して気遣ってくれるラスの肩を抱いて小屋を出たコハクは、老人がしわくちゃの顔で山の坂を上り始めた自分たちをまだ見ていることに気付いていたが、ここではこれ以上の収穫がなさそうなので先を急ぐ。
山の空気はひんやりとしていて涼しく、山の頂上は雪がかぶっているのでそこまでは馬車に行くことにして、村が見えなくなったところでぱちんと指を鳴らして馬車を出した。
乗り込んだ後はどこか考え事をしているコハクが新婚旅行を楽しめなくなったのでは、と思ったラスは、眠っているルゥの額にキスをして顔を上げた。
「コー…」
「なーんだその顔は。心配すんなって、あそこは絶対チビが喜ぶようなことばっかだぜ。工芸品もそうだけど、年中雪が溶けねえからいつでも雪遊びできるし」
「じゃあ楽しくなかったらすぐここを出ようね。コーの赤い瞳とっても綺麗で大好きなのに…みんなどうしてその良さをわからないんだろ…」
「ま、昔から赤は不吉だって言われてることだしな。田舎に行けば行くほどそう思ってる奴らは多いんだ。ホルンでまたチビを嫌な思いにさせたくねえから目の色は変えとくか」
コハクが瞳を閉じて両の瞼に人差し指と中指をあてて開いた。
するとコハクの瞳の色は落ち着いた濃紺の色になり、ぐっと落ち着いた印象になったコハクにラスが抱き着いて頬を撫でまくる。
「コー、いつもと全然違う!かっこいいよ、素敵。今のコーも好き」
「マジでか。これだと多分チビに迷惑かけねえと思うし、楽しもうな」
「うん!」
ラスを優しく抱きしめる。
不吉なものからラスを守るように――