魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
馬車はあっという間に坂を駆け上がり、柵に囲まれたホルンに着いた。
コハクは瞳の色を変えているので何も問題はないと思っていたのだが――
ラスがルゥを抱き、コハクがキャリーバッグを引きながら村に入ると、入り口付近に居た住人らしき髭の生えた若い男が表情を引きつらせて後ずさりをした。
「え…!?お前…さっきまでそこに…!」
「はあ?俺たち観光客なんだけど、どっか泊まるとこ紹介してほしいんだけど」
不機嫌な声でそう伝えると、男はうろたえた様子を診せたが、コハクの瞳の色を覗き込んで雑念を振り払うように何度も首を振ると、コハクの隣でにこにこしているラスを見てぽうっとなった。
「そ、そうか、観光客ですか。そうだよな、瞳の色も違うし……いや、な、なんでもありませんよ、どうぞこちらに!」
「?なんなんだよ…」
「ここもなんだかおかしいね。コー、どうする?原因知りたい?いやな思いするのなら無理しなくてもいいんだよ?」
山奥のホルンには所々雪が残っており、ルゥのように熱の魔法をかけていないラスが小さなくしゃみをしたので、コハクは、ラスの肩を抱いて首を振った。
「俺は無理してねえけど、ちょっとだけ付き合ってほしいんだ。こういうの気になるからさ」
「うん、わかった。でもこの村綺麗だね。雪も積もってるし、後で雪遊びしようよ」
村の中へ入ると、それまでわいわいと騒がしかった住人たちの声がぴたりと止み、ラスを…いや、コハクを見て凍り付いた表情を浮かべた。
だが宿泊施設を案内してくれている男が声を上げて説明をする。
「この方たちは観光客だ。皆、粗相のないように!」
「ああ、観光客か…。そういえば違う……」
村の真ん中にはバザー風の施設があり、そこでは野菜や果実、工芸品が売られていた。
ラスはそちらに夢中になっていたが、コハクは皆が自分をちらちら盗み見しているのでそれが気になっていたが、今はラスの身体を温めなくてはいけない。
「チビ、とりあえず身体あっためてからバザーを見に行こうぜ」
「うん。コー、ここいいとこだね」
わくわくしているラスとは対照的な気分だったが、コハクはラスを心配させないために笑みを浮かべて肩を抱いた手に力を込めた。
コハクは瞳の色を変えているので何も問題はないと思っていたのだが――
ラスがルゥを抱き、コハクがキャリーバッグを引きながら村に入ると、入り口付近に居た住人らしき髭の生えた若い男が表情を引きつらせて後ずさりをした。
「え…!?お前…さっきまでそこに…!」
「はあ?俺たち観光客なんだけど、どっか泊まるとこ紹介してほしいんだけど」
不機嫌な声でそう伝えると、男はうろたえた様子を診せたが、コハクの瞳の色を覗き込んで雑念を振り払うように何度も首を振ると、コハクの隣でにこにこしているラスを見てぽうっとなった。
「そ、そうか、観光客ですか。そうだよな、瞳の色も違うし……いや、な、なんでもありませんよ、どうぞこちらに!」
「?なんなんだよ…」
「ここもなんだかおかしいね。コー、どうする?原因知りたい?いやな思いするのなら無理しなくてもいいんだよ?」
山奥のホルンには所々雪が残っており、ルゥのように熱の魔法をかけていないラスが小さなくしゃみをしたので、コハクは、ラスの肩を抱いて首を振った。
「俺は無理してねえけど、ちょっとだけ付き合ってほしいんだ。こういうの気になるからさ」
「うん、わかった。でもこの村綺麗だね。雪も積もってるし、後で雪遊びしようよ」
村の中へ入ると、それまでわいわいと騒がしかった住人たちの声がぴたりと止み、ラスを…いや、コハクを見て凍り付いた表情を浮かべた。
だが宿泊施設を案内してくれている男が声を上げて説明をする。
「この方たちは観光客だ。皆、粗相のないように!」
「ああ、観光客か…。そういえば違う……」
村の真ん中にはバザー風の施設があり、そこでは野菜や果実、工芸品が売られていた。
ラスはそちらに夢中になっていたが、コハクは皆が自分をちらちら盗み見しているのでそれが気になっていたが、今はラスの身体を温めなくてはいけない。
「チビ、とりあえず身体あっためてからバザーを見に行こうぜ」
「うん。コー、ここいいとこだね」
わくわくしているラスとは対照的な気分だったが、コハクはラスを心配させないために笑みを浮かべて肩を抱いた手に力を込めた。