月のあかり
 
「ああ、どうして?」
 
「私もすぐ近くにいるんです」
 
「えっ‥‥?」
 
 まさかの思いが脳裏に過り、それはすんなりと的中した。
 
「バイトだったんです。ファーストフードの」
 
 間違いなかった。さっき行ったお店で、彼女はバイトをしていたのだ。
 
「丁度いま、早朝のバイトが終わったんです」
 
「そ、そうなんだ‥‥」
 
「あの、もうお昼ご飯食べましたか?」
 
 あかりは、自分のバイトしているお店のサンドイッチが美味しいよ、と勧めてきた。
 無論その誘いに乗れるはずはなかった。
 ぼくはつい10分足らず前に、注文したサンドイッチを受け取らずにお店を出て来てしまったばっかりだ。
 
 その時あかりの姿は確認出来なかったけど、カウンターに立って対応してくれたバイトの女の子には、すでに面が割れている。
 いまから惚けた振りをして、またお店に顔を出せる訳がない。
 ぼくはあまりお腹が空いていないと言って誤魔化した。
 その誤魔化しの思慮が功を奏し、あかりに対しての即興の誘い文句を思い付いた。
 
 
「バイトが終わって、この後どうするの?」
 
「もう家に帰りますよ」
 
「そうか、もしよかったら車で送ってあげるよ」
 
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