月のあかり
「それで携帯番号もメールアドレスも変えちゃったんです。そしたら嶋さんにも何となく連絡しづらくなっちゃって」
「そうだったんだ。でもそういう所なら結果的に辞めてよかったんじゃない?」
彼女を慰めるように言うと、何故さっきのあかりからの着信が知らない番号だったのか、その理由が理解出来た。
あかりはぼくの言葉にコクリと頷くと、目をパチパチさせて、悲しそうな表情を振り払おうとしているようだった。
ぼくは車を街道沿いに南下させた。
彼女が音信不通だった明確な理由が分かり、ぼくの心は晴れやかになったけど、やはり3週間ぶりの再会は、お互いの会話を円滑に進めることを鈍らせた。
二人を乗せた車から見える前方の空は鮮やかなほど青いのに、フロントガラスにはポツポツと水滴が浮かんでゆく。
二人を包む天気雨。
やがて車は渋滞にハマり、人が歩く速さと同じぐらいのノロノロ運転が続いた。
しばらくして、ぼくのお腹が《くぅ》とネズミの鳴き声のように小さく鳴くと、車内の重い静寂を和やかな空気に一変してくれた。
「あははっ、本当はお腹空いてたんじゃないのぉ?」
あかりに一瞬で見破られ、クスクスと笑われた。
否定も肯定も出来ずにぼくが苦笑いしていると、彼女は持っていたカバンの中からゴソゴソと何かを取り出した。