月のあかり
 
 ぼくはあかりの繊細な感覚と、思いやりある心を再認識した。
 
「じゃあ楽しみにしとくよ」
 
「お店のとどっちが美味しいか比べっこしてね」
 
「すごい自信じゃない?」
 
 あかりは唇を尖らせ「まあね」と得意気に答えた。
 
 バイト先のお店で作っているレシピや素材を見ているうちに、もっといい素材やソースを使い、自己流に改良することで自分の家でも、もっと美味しいものが作れるんじゃないかって、いつも思案していたらしいのだ。
 
「まだ作ったことはないんだけど」
 
「じゃあ、その時はぼくが初の試食者になるってわけだ」
 
 そう言うと、あははっ、と笑ってはぐらかされた。
 でもあかりなら本当にとびっきり美味しいサンドイッチを作れるんじゃないかって思う。
 
 
「あっ、ねえ、ねえ」
 
 手摺りから身を乗り出して景色を眺めていたあかりが、再び何かを見つけたように声を上げた。
 
「月が出てるよ」
 
 彼女が指を差す東の空には、まだ昇り始めたばかりの月が、赤みがかった顔をひっそり浮かべていた。
 
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