月のあかり
 
「また満月っぽいね」
 
 ぼくはそう言うと、あかりはコクリと頷いた。
 キャバクラの帰りに喫茶店で会話をした時、見上げた夜空にも満月が輝いていた。
 あれから4週間が経ち、再び満月の周期がやって来たのだ。
 
「この前ボウリングした時は半月だったよね」
 
 そんなあかりの言葉にぼくはこう返した。
 
「うん、まるでいつも月に見守られてるみたいな気がするよ」
 
 そうだね、と言ってあかりはニコリと微笑んだ。
 ぼくは北風を防ぐように後ろから彼女を抱き締めた。
 
「‥‥‥」
 
 あかりは不意を討たれたようにピクッと反応した後、声にならないハミングを漏らした。
 そして急に思い出したようにこんな事を訊いてきた。
 
「ねえ、直樹さん。月の模様がどうしてウサギに見えるって言われてるか知ってる?」
 
「餅つきしているってこと?」
 
「うーん‥‥ 違うの。その元になっている話だよっ」
 
「知らないなあ」
 
「教えて欲しい?」
 
「ああ、教えて」
 
 素直なぼくの返答が意外に思えたのか、あかりはひと呼吸間を置いてから話し始めた。
 
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