月のあかり
「あのね、もともとインドのお話なんだって」
「インド?」
「そう、インド」
印度カレーのインド? ぼくが茶化すように言うと、真面目に聞いてよぉ、と叱られた。
「そこに心の優しいキツネと猿とウサギが居たんだって」
「それで?」
「キツネと猿とウサギは、何か人間の役に立つ事は無いかと話し合っていたの」
「人間の役に?」
「それを見ていた帝釈天ていう神様が、飢えて行き倒れた老人の姿に化けて、キツネたちを試したんだって」
「帝釈天?」
意外な話の展開に、ぼくは次第に引き込まれていった。
「キツネは空腹な老人に何か食べさせようと、すばしっこい動きで川の小魚や貝を取って来たんだって」
「猿やウサギは?」
「猿は木に登って木の実や果実を取って来たの」
「じゃあウサギは?」
ぼくが興味津々に訊くと、あかりはとても悲しそうな顔をして言葉を溜めた。