月のあかり
部屋に入ると満央は上目遣いにぼくの顔をチラッと見た。
そして履いていたブーツを脱ぎ捨てると、ベッドの上で猫のような、しなやかな曲線を描いた四つん這いの姿勢をとった。
今更ながら今日の彼女が、身体にフィットしたスリムジーンズを履いていたことに気付いた。
ともすれば、突き出された形のいいヒップが、ぼくの欲情を誘うように計算された求愛のポーズなんじゃないかと思い込まされる。
ところが満央はベッドの中央ですっくと立ち上がると、キャッキャとはしゃぎながら、トランポリンのように無邪気に跳びはね出した。
「一度やってみたかったんだ」
「やっぱり子供だなあ」
ぼくは少しの安心と、少しの落胆混じりにそう言った。
「直樹さんもやってみなよぉ」
「やだよ」
いい歳してそんなこと出来るはずがない。
「はぁ、楽しかったぁ」
満央は一頻りピョンピョンと跳びはねた後、ベッドの端にちょこんと座り、ふう、と息を吐いて満足気な表情を浮かべた。
「もしかして、それがしたかったの?」
ぼくが不満を滲ませて言った。
ここに来た目的が本当にそれだけだったら、期待と緊張で張り詰めたぼくの身体は、爆破されたビルのように木っ端微塵に崩れ去るだろう。
満央は小さく舌を出してしかめっ面をした。