月のあかり
「シャワー浴びてくるね」
一転して大人っぽい口調で言い、上着を脱いでバスルームへと向かった。
「覗かないでね」
「はい、はい」
そう返事をしながらも、ぼくがふざけて近づこうとすると「シャーッ!!」と、いつもの猫の威嚇が返ってきた。
そして脱衣所に入ると、磨りガラスのドアをパタンと閉め「あははっ」と笑った。
時に子供の仕草を見せ、時に大人の大胆さを醸し出す彼女に、ぼくはすっかり翻弄されているけれど、いつの間にか心地良く、軽いマゾヒズム的な中毒症状を発症している自分がそこに居た。
「あ、直樹さん。私、車に忘れ物しちゃった」
満央は服をすべて脱いだようで、全身モザイクのようなシルエットのままぼくに言った。
「なに忘れたの?」
「カバン」
ああ、あのカバンか。
ぼくは、彼女がガサゴソとサンドイッチや名刺を取り出したあのカバンだと思い出した。
「そこにお化粧品とかも入ってるの」
「分かった。取って来るよ」
「うん、ごめんなさい」