月のあかり
 
「だめっ、電気つけないで」
 
 消されていた室内の照明をつけようと、壁にあるスイッチに手を掛けた途端、不意に満央の声がした。
 
「暗いままにしといて」
 
 テレビの明かりだけで照らし出されている室内を目を凝らして見回すと、満央はすでにベッドの上で掛布に包まって横になり、鼻から上をシーツから出してこちらを見ていた。
 
「なんで電気消したの?」
 
「だって恥ずかしいじゃん」
 
 そう言って満央はモゾモゾと頭の先まで掛布を被った。
 
「カバン持って来たよ」
 
「うん、ありがとう」
 
 ぼくは満央の携帯が鳴っていたことを伝えるべきか迷った。
 
「そういえばさ」
 
「なに?」
 
「‥‥いや、なんでもない」
 
 なによぉ、と言って満央はまた顔の半分を出した。
 ぼくは自分の口から言うべき事ではないと思った。
 
 いずれ彼女自身が気付く事だし、ぼくが立ち入る範疇のことじゃない。
 
 
「カバンここに置いとくよ」
 
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