月のあかり
ぼくがシャワーから出ると、満央はベッドの上にいなかった。
テーブルへ目をやるとカバンはそのまま残されていた。
しかしサイドポケット側に回り込んで見ると、そこに携帯電話は挟まっていなかった。
携帯を持ったまま部屋からいなくなった満央。
再び嫌な予感がして‥‥いや、予感を通り越した胸騒ぎがして、室内の照明を付け、満央の姿を捜した。
オートロックが解除されていたドアを開けて廊下を覗くと、元の服に着替えてしまった満央が背中をこちらに向け、何やら携帯で話しをしていた。
ぼくは満央に気付かれないように、そっとドアを閉めて部屋に戻ると、へたり込むようにベッドに腰を下ろした。
やっぱり着信履歴を見たあと、ぼくに聞かれないようにわざわざ廊下へと出て、あの高梨裕也という男性に電話を掛け直しているのだろうか?
すると1分もしないうちにドアの開く音が聞こえ、満央が部屋へ戻ってきた。
「きゃっ」
小さな悲鳴をあげ、満央は目を背けた。
いつの間にか室内の照明が灯された中で、ぼくがバスローブ姿でベッドに座っていたからだろう。
「お帰り」
何事も無かったように、そして何も知らない振りをして、ぼくはおどけたように言った。
満央は少し気まずそうな表情を返した。