月のあかり
「ねえ、電気消していい?」
満央はぼくの「うん」と言う返事も聞かないうちに、パチリと照明のスイッチを切った。
「家に電話してたの。今日遅くなるって」
「そうなんだ」
「本当は門限厳しいんだよっ」
「ふーん」
ぼくは訝しげな返事をした。
「あーっ、疑ってるでしょ?」
「別に」
「もぉー」
スネたように見せた後、満央は「あっち向いててよ」と言って、ぼくを軽く突き飛ばすような仕草をした。
ぼくはまんまと突き飛ばされた真似をして、そのままベッドの上に転がり掛布に包まった。
満央は付けっぱなしのテレビのブラウン管から放たれる薄明かりをバックに、いかにも“彼女”と分かる独特のシルエットを浮かび上がらせていた。
その姿を見た瞬間、昨夜の《ためいき色》の夢で見た『あかり』そっくりの女の子の姿が、脳裏の五線譜にリフレインした。
「あかり‥‥」
思わず声に出して呟いてしまった。
彼女は首を横に振った。
「満央だよ」