月のあかり
 
 満央もまた呟くように言って、決して怒ったり機嫌を損ねている様子には感じられなかった。
 ただじっとぼくを見据えたまま、羽織っていた上着から順に、服を一枚一枚脱ぎ始めた。
 
「ねえ、満央」
 
 ぼくは動物的な性行為に至る前に、理性的に訊いておきたい事を思い出した。
 
「あのさ、最近はあの《ためいき色》の夢を見たりする?」
 
 そう質問すると、彼女ブラウスのボタンを外し掛かっていた手をピタリと止めた。
 
「昨夜久しぶりに見たの」
 
「本当に?」
 
「うん」
 
「どんな夢だったの?」
 
 ぼくがそう訊くと、信じてもらえるか分からないけど‥‥と前置きして満央はこう言った。
 
「直樹さんとドライブして、そして‥‥」
 
 満央は恥ずかしそうに言葉を躊躇った。
 
「そして?」
 
「‥‥いま、こうなってる通り」と言葉を繋げ、周りをキョロキョロ見回す動作をした。
 
 そして「本当なの」と付け足して、気の利いた方便ではないことを彼女は強調した。
 
「正夢だったのかな?」とぼくが訊いた。
 
「うん、多分そうだと思う」
 
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