光の花は風に吹かれて
ふわりと……意識が浮上して、ローズはゆっくりとまぶたを開けた。

このシンプルな白い天井も、もう見慣れたものだ。

ローズはふぅっと長い息を吐きながらもう1度目を閉じた。

悲しい夢を終わらせてくれるのはいつもセスト。優しい囁きと甘くて温かいキスで目が覚める。

目を開けて、そっと唇を指でなぞってみる。

夢なのに、とてもリアルな感触が残っている唇。

(変だと思われても仕方がないわ……)

何度も同じ夢を見て、出てくる知らない男性に会いたくて早く眠る夜も数え切れないほどになって。彼に恋をしているのだと気づいたら……後宮を抜け出していた。

その日は本城が騒がしくて、なぜか後宮の警備もなくなっていたから簡単だった。後から聞いたところによれば、ユベールが今までの比ではない癇癪を起こしたのだとか。

何であれ、後宮、そしてルミエール王国を脱出することに成功し、夢の中で得られる情報のみで彼を探した。

ダークブラウンのくせっ毛に、同じ色の瞳と少しタレ目の物腰柔らかな男性。質の良さそうな服を着ていたから上流階級だと思う、と聞き込んで北へと進んでいって。

普通なら、馬鹿げたことだと思うだろう。でも、なぜか確信めいたものを感じていた。

彼が本当に存在するのだと――
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