光の花は風に吹かれて
「――セスト様っ」

それは、ローズがギュッとシーツを握り、無意識にセストの名を呼んだときだった。

部屋の扉が軽く叩かれ、少し間を置いて開かれる。

ローズはハッとして身体を起こした。

いつもなら、セストの部屋の前で彼が出てくるのを待っている時間。時計から扉へと顔を向けると、セストが立っていてローズを見て眉根を寄せた。

「申し訳ありません。また、お加減が悪いのかと……心配になったもので」
「ぁ……っ、ごめんなさい」

ローズは慌てて頬を伝う涙を拭ってベッドを降りた。

「まだ早いですからご気分が優れないのなら――」
「大丈夫です!良くない夢を見てしまって……ふふっ、子供みたいでおかしいですね」

ローズを気遣うセストの言葉を遮って、笑顔を向ける。

セストの前ではできるだけ笑っていたい。

意味のない理想だと思われてもいい。ただ、少しでも輝く自分を見てもらいたいと思う。きっと、それが恋なのだ――
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