金色のネコは海を泳ぐ
「ルー、チェ……?」

ジュストが珍しく困惑したような表情になった。

「泣かないで……」
「え……?」

ルーチェはそう言われて自分の頬に触れた。すると、濡れた道筋がいくつかできているのを感じて……自分が泣いていたことに気づく。

「やっぱり、おいしくなかったんだ……ごめんね?」

ジュストの手がルーチェの頬に触れて、優しく涙を拭ってくれた。もう一方の手はルーチェの頭を撫でてくれる。

その仕草が、やっぱり昨夜のジュストと重なって、苦しくて。

どうしてなのだろう……?

どうしてこんなに苦しいのだろう?

こんなことは初めてで、でも、どうしても涙が止まらない。

「ごめんね。僕、もっと練習するから」
「違っ――」

昨日から……そればかり。

一体何が違うというのか。

ジュストの料理が本当はおいしかったことを、ルーチェのために作ってくれたことが嬉しかったと……素直に言えばいいだけなのに、出てくるのは“違う”という言葉ばかり。

「僕、明日はルーチェの好きなグラタン作るから、だから泣かないで」

ジュストはそう言って、ルーチェの涙が止まるまで頭を撫でてくれた。
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