金色のネコは海を泳ぐ
ショックを受けたようなグラートとは対照的に、アリーチェとブリジッタはキラキラと背中に花を背負っているようだ。

「なかなか降りてこないと思ったら、そういうことだったの。じゃあうまく行ったんだ?」

アリーチェはニヤニヤしながらケーキの苺を口に入れた。

「やだ、私……複雑だわ。ジュストくんの想いが叶ったのは嬉しいけれど、やっぱり娘の母親としては……でも、いつかは経験することだし……」

ブリジッタはグラートのフォークも拾わないまま、1人でキャーキャー言っている。

「違うのっ!ジュストは本当に私を食べようとしたの!!痛かったんだからね!思いっきり――」
「ま、待て。ルーチェ」

なんとか誤解を解こうと叫ぶと、グラートが慌ててそれを遮った。

「いいから。お、俺はジュストなら許すと言ったし、その……そういうことは、報告しなくてもよろしい」
「だから違うんだってば!」

あぁ、もう。どうしたら話を聞いてもらえるのだ?

「ルーチェ、ごめんね?ユベール兄様は優しくしてあげなきゃダメって言ってたのに、僕、上手にできなくて――」
「ああああぁあ!もう、ジュストは黙ってて!」

これ以上、話をややこしくしないで欲しい。

結局、ジュストの空気を読まない発言を受けながらの説得は困難を極め、グラートが安心した顔になるまで実に2時間かかった。

ブリジッタとアリーチェはとてもガッカリしていたけれど、ジュストが「次は優しくする」とルーチェに抱きついているのを見て苦笑いしていた。

ルーチェの心臓は、“次”というジュストの言葉にやっぱり甘さと苦しさが混じった音を立てたけれど、ルーチェはそれに気づかないフリをして――

21回目の誕生日は賑やかに過ぎていった。
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