金色のネコは海を泳ぐ
「それで、ルーチェ、どうだったの?」
「あ、うん……トラッタメントはやっぱりうまくいかなかった。でも、薬の調合と筆記試験は大丈夫だと思う」

そう答えると、ブリジッタの顔があからさまにガッカリした表情に変わった。

「違うわよ!そんなことは聞いていないの。プロポーズよ、プロポ-ズ」

試験は“そんなこと”ではないと思うが……

「プロポーズはされてないよ」

ルーチェがため息をつくと、アリーチェはもっと大きなため息をつく。

「指輪までもらっておいて、それはないでしょ。テオはハッキリしないところがあったから仕方ないけど、ジュストはこんなに真っ直ぐなのに、かわいそう……」

どうしてここでテオの名前が出てくるのだろう。ルーチェは眉を顰めてアリーチェを見た。

「あのね、僕、まだ婿修行が足りないみたいなの。ルーチェを食べたら、ルーチェは痛くて泣いちゃって、それで――」
「ジュストっ」

かなり誤解を招く言い方をしないで欲しい。

「むっ、むぅーむっ?」

ルーチェは慌ててジュストの口を塞いだ。

「食べた……?」

グラートのフォークが音を立てて床に落ちた。
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