金色のネコは海を泳ぐ
角を曲がったところで壁に背をついて、大きく息を吐く。廊下は会場と違って寒くて、火照った身体を冷ましてくれた。

少し、落ち着こう。振り回されたらダメだ。

「もう……っ」

1人呟きながら、ルーチェは髪の毛を乱暴に梳いて耳元を隠すようにした。

だが、ふと……先ほどジュストの指が触れた“印”に触れてみる。

そんなはずはないのに、そこだけ温度が高い気がして……それを意識した途端、また心臓が騒ぎ始めた。

あの日……試験から帰った日に初めてつけられたキスマークは、毎日のように上書きされて消えることがない。

ルーチェが逃げることを理解しているジュストは、ルーチェが起きる前に人間の姿になって印をつけているのだ。

「はぁ……」

しばらくそのまま壁に寄りかかり、なんとか呼吸を整えたルーチェは、まだ少し速めのビートを刻む心臓を押さえながら来た道を引き返し始めた。

冷静に……

何度も自分に言い聞かせながら会場へ戻ると、先ほどまでジュストとルーチェがいた辺りに人だかりができていた。
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