金色のネコは海を泳ぐ
素早くボタンをかけ直してしまったルーチェは真っ赤な顔をして、アリーチェの立っているドアの方へ歩いて行ってしまった。

「何か用なの?」
「あ、うん。ここの問題がわからなくて――…」

アリーチェは宿題の分からない箇所を聞きに来たようだった。

だんだんとドキドキも収まってきたジュストはまだ痛む頭を擦りながらフッと息を吐いてベッドに寝転んだ。

ルーチェは……

ルーチェが“違う”というのは、ジュストの“好き”ではなくてルーチェの“好き”なのかもしれない。

どうしてなのか……ルーチェはジュストのことを好きだと思ってくれていると思っていた。

イジワルをするから――ユベールに言われてそう思っていたけれど、最近はそれがユベールにしか当てはまらないのではないかと思っている。

ルーチェの“好き”はLikeなのかも。

そう思ったら、苦しくなった。

「ルーチェ……」

こんなに好きなのに。これが、“片想い”というやつなのだ。

ジュストは枕に顔を埋めた。ルーチェを抱き締めるときと同じ匂い――安心する。

アリーチェに一生懸命勉強を教えているルーチェの声がだんだんと遠ざかっていって、ジュストは眠りに落ちた。
< 226 / 268 >

この作品をシェア

pagetop