金色のネコは海を泳ぐ
ジュストがルーチェに印をつけた最後の日――ルーチェがジュストを思いきり叩いてしまったその翌日から、ジュストはルーチェにひっつかなくなった。

別に避けられているわけではない。

ただ、今みたいに……本当にただ“家族”のようになった、というのだろうか。

ルーチェを抱き締めることもしなければ、一緒に眠ることもやめて自分に宛がわれた部屋を使い始めた。

「婿」という単語さえ使わなくなって。

ルーチェはそれを望んでいたはずだった。

そういう日が来るのだと、きちんとわかっていたはずだったのに。

いざ、そうなってみたら苦しくて痛くてたまらない。

こんな片想いは――初めての恋は――つらい。残酷なのは、それが自分の気持ちにハッキリと気づいてしまってからだったこと。

ジュストの態度の変化も、何もかも。

どうしようもなく胸が締め付けられる。

ジュストが背を向ける度に、チクリと針が刺さるように心が痛くて。ジュストが隣にいないだけで、夜もよく眠れない。

こんなに好きになっていたなんて、ルーチェだって知らなかった。
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