金色のネコは海を泳ぐ
「ひっ!?」

ルーチェは喉をヒュッと鳴らして仰け反った。

もし本当に“オロ”がジュストなのだとしたら、ネコに憑依した――

「あ、貴方……ゆ、幽霊だったの?」
『違うよ!』

ルーチェが身震いすると、ジュストはムッとしたような声を出し、ルーチェを見上げた。

『僕、ちゃんと生きてるよ。でも、どうやって人間に戻ればいいのかわからないんだ』

ジュストは驚きに固まるルーチェに近づいて、膝の上に乗った。

そして大きな琥珀色の瞳でルーチェを見つめて話し始める。と言っても、これは伝達の呪文の類のようでジュストの口は動いていない。ルーチェに直接メッセージを送っているようだ。

とりあえず、ジュストの話をまとめると……

生まれてからずっと眠り王子と呼ばれてはいたが、意識はあったらしい。クラドールが入れ替わり立ち代りジュストを診察・治療したけれど彼の身体が動くことはなかった。

ルーチェにクラドールとしてのレッスンをつけられたのは、ジュストがおそらく世界で一番トラッタメント――それも王家専属クラドールレベルのもの――を受けたことがあるからのようだ。

それでも17年間ずっと眠ったままだったのに、ロラン第二王子の暴動の際、急にネコになってしまったというから不思議だ。

『気づいたら海にいたんだ。僕、学校に行ったことないから呪文はわからないけど、チャクラは持ってるからなんとか泳いで来れた』

とにかくジュストは海を渡ることに成功し、ルーチェに拾われたということだ。
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