金色のネコは海を泳ぐ
「でも、今のその……喋るのは?呪文はわからなかったんじゃないの?」

そう問うと、ジュストはピョンと跳ねてルーチェの胸に抱きついた。ルーチェは思わずジュストを受け止める。

『ユベール兄様が教えてくれたんだよ。でも、鍛錬は大変だったんだ』
「もしかして、それで泥だらけになって帰ってきてたの?」

ここ何週間かずっと朝早くいなくなって汚れて帰ってくることを繰り返していたのは鍛錬をしていたからなのだ。おそらくその前に倒れたのもチャクラの使い方を間違って貧血のような状態だったのだろう。

「ていうか、ユベール兄様って王位継承権を破棄したっていう第一王子でしょ?そんな人にいつ会ったのよ?」

そう言うと、ジュストは首を傾げた。

『ルーチェも会ったじゃない。図書館に行ったときだよ』
「え……あ、あの“お兄さん”!?」

数週間前、図書館で会った不思議な男性?だが、そういうことなら会話ができていたことも納得がいく。兄弟で何かつながっている部分があるのだろう。

『兄様は姉様とマーレ王国に住んでるの。兄様はクラドールのルーチェなら僕がネコになった原因がわかるかもって言ってた』

うるうると琥珀色の瞳が揺れて“ルーチェしかいない”と言われているような気になる。バラルディ家のアイドルの地位は伊達じゃないらしい。

「で、でも、どうやって人間に――ん?」

ルーチェは視線を落としてジュストと触れ合っている場所を見た。ジュストの手――見た目はネコの可愛い肉球のついた手だが――が、ルーチェの胸に。

確か新聞ではジュスト第三王子は17年間の生涯を終えたと……

つまり、ジュストは17歳だ。人間の、17歳の、オトコ。
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