金色のネコは海を泳ぐ
「君、僕のことは嫌いだと思ってたけど?」

ルーチェが図書館に入っていって、僕とユベール兄様は入り口のベンチに座った。

茶色い髪の毛がくるくるしてる。お城にいたときより長くなったみたい。僕と同じ色の目で僕を見てる。僕が嫌い……だった、兄様。

本当は、ルーチェと一緒に行って呪文の本を借りてもらおうと思ったけど、僕は文字が読めないからユベール兄様に教えてもらうほうがいいよね?

ルーチェは僕の言いたいこと、ちょっとしかわかってくれないもん。

「にゃー」

あぁ、僕、ちゃんと喋ってるのに……どうして「にゃー」しか言えないの?

「まぁ、君が僕を嫌いでも好きでもどうでもいいけどね。ていうか、君、なんだか不思議な呪文をかけられてるねぇ……なんだろ、これ?」

ユベール兄様は僕を持ち上げて、身体の隅々までじっくり見てる。

「にゃうん?」
「無理だね。僕はこういう呪文は得意じゃないし」

なんだ……ユベール兄様でも解けない呪文じゃ、僕はもう人間に戻れないのかも。ロラン兄様のせいで身体もなくなっちゃったし。

「でも、あの子と話ができる呪文なら教えてあげるよ。マーレは優秀なクラドールも多いし、診療所に連れて行ってもらえばいい。どう?」
「にゃー」

ルーチェと話ができるようになる!?嬉しくてユベール兄様に飛びついたら笑われた。

「あの子のこと、そんなに好きなんだ?」
「にゃ」

好きだよ?だって、ルーチェは頑張り屋さんだし、僕のこといっぱい抱っこしてくれるし、たまに研修で失敗して泣いてるけど……僕にはいっぱい笑ってくれるもん。いっぱい怒ったりもするけど。 
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