金色のネコは海を泳ぐ
「――…オロ、君も大変だね?」
「にゃう」

ユベール兄様は、僕が“オロ”って呼ばれるの嫌だってわかってて言ってるんだ。もう、やっぱりイジワルなんだ!姉様が可哀相だよ!

「あれ、お子さんが生まれるんですか?」

ルーチェがユベール兄様の持ってる本を見て言った。赤ちゃんの本なの?

「あぁ、うん。生まれるのはまだ先だけどね。ついこの間、わかってさ」
「そうなんですか。おめでとうございます」

ユベール兄様はとっても嬉しそうに笑ってルーチェに「ありがとう」って言った。

「にゃー?」
「そうだよ。大丈夫、僕の可愛いお嫁さんもちょっと悪阻がつらそうだけど、元気だから」

そっか。赤ちゃんが生まれるんだ。姉様の赤ちゃん、僕も見たいな。

「じゃあ、僕は帰るよ。可愛いお嫁さんと女の子……あ、男の子も待ってるから」

赤ちゃんは2人いるの?

いつ生まれるの?

いつ会えるの?

いっぱい聞きたいことがあったのに、ユベール兄様は手を振りながら走って帰っちゃったんだ。

「不思議な人だったね」
「にゃー」

その後、ルーチェは重い本を持ちながら僕のことも抱っこしてくれた。やっぱり、ルーチェはあったかい。

ルーチェ、僕、絶対呪文を使えるようになるからね――…
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