恋の訪れ
「つか、早く乗れよ」
そう言った昴先輩の声までもがムカついて、あたしに対してガキと言った先輩が凄くムカつく。
だから次第に目が潤んでくる。
「乗んねーのかよ。つか、俺が一番嫌いな奴、教えてやろっか?」
何を根拠にそんな得意げに言ってんのか分かんない先輩に、つい視線が向く。
「何よ?」
「面倒くせー女と、すぐ泣く女」
「はい?」
「その女が一番うっとおしいっつってんの」
「な、なんなの?って言うか、すぐ泣く女って、昴先輩が泣かせてんじゃん」
「はぁ!?」
「知ってるんだから!いつも先輩は女の子、泣かせるじゃん」
いつも、いつも女の子を目の前に泣かせてるじゃん。
それなのに、よくそんな事、言うよ。
「は?つか泣かせた記憶もねーし、むしろ勝手に泣いてんだから俺が泣かせた訳でもねーし」
「なっ、」
なんなの、ホントに。
ほんとに悪魔じゃん。
初めて見た時から、この人は悪魔だった。
もう、あの優しい美咲さんの子供だなんて思いたくないよ…
「つーか、まじ早くしろって。俺、急いでんだって」
急かす様に昴先輩はそう言って、白の車に乗り込む。
来た時にあった黒のベンツの車はなくて、それはパパが乗って行ったんだって、すぐに分かった。