恋の訪れ
「俺、言わなかったっけ?面倒くさい女と、泣く女が一番嫌いって」
そう言われて不意に走った涙を触ることも出来ず、目の前の昴先輩があまりにもムカつくから睨んでやった。
「別にいい。昴先輩に嫌われてもいいし、むしろ大嫌いだし!!」
「さっき好きっつったのに?」
「それは昔の…男の子だよ」
「それ、俺…だから」
「違う!昴先輩なんかじゃない!」
「つーか、」
そこまで言って、のめり込む様に助手席のヘッドレスを昴先輩は左手で抱え込むと同時に、ぐっと近寄った先輩の顔が目の前に現れる。
思わず身体をそり返すも、それ以上、身体は倒れる事無く、目の前の先輩の顔を見たら動けなくなった。
だって、悔しいけど男前すぎる。
あの時の男の子の面影ってもんがないけど、あの時よりは確実に男前だった。
「…な、に?」
「つかさ、そのうっせー口、黙らせてやろっか」
「はい?」
「大概の女は、キスすっと大人しくなんの」
「は?冗談、やめてよ…」
「俺、冗談嫌いなんだけど」
真剣な昴先輩の瞳があまりにも怖くて、その昴先輩の身体を軽く押す。
徐々に離れていく昴先輩に軽く深呼吸し、「最低っ!」そう小さく呟いて、車を降りた瞬間、バンって、おもいっきりドアを閉めてやった。
なんなの、あの悪魔。
やっぱ悪魔は悪魔だけに最低だった。