恋の訪れ
朝からそんな事を聞かされ、不機嫌満開だったあたしは重い足取りで学校に向かう。
だけど後もぅ少しって所で、あたしの表情が柔らかくなったのは言うまでもなかった。
「…ヒロくんっ、」
駆け足で側に寄り添ったあたしに、ヒロくんは口角を上げる。
「おー、莉音おはよ」
「おはよう」
やっぱヒロくんは素敵だ。
その笑みで何回癒されたのかも分からない。
ママが言ってた、素敵で優しな男の子と言うのは絶対ヒロくんなんだから。
あの悪魔と一緒にしないでほしい。
「莉音、調子は大丈夫なわけ?お前、最近悪そうだから」
「全然、平気だよ。ヒロくんに会うと元気がでるの」
「はぁ?何だよ、それ」
苦笑いで呟くヒロくんに、同じく笑みを漏らし視線を辿り着いた正門に向けた瞬間、またあたしの表情が曇る。
よりによって、こんな所で出会うなんて。
その先に見えるのはサクヤ先輩と昴先輩と、その他。
「…最悪」
「え、なに?」
思わず漏れた言葉にヒロくんは不思議そうに首を傾げる。
そして通り過ぎようとした瞬間、あたしに気づいたサクヤ先輩は蔓延の笑みであたしに手を振った。
もぅ、やめてよ。ヒロくん居るのに…
「やっぱヒロくんは優しいよね。誰かと違って」
サクヤ先輩からソッポ向くようにヒロくんに視線を向ける。
その横に居た昴先輩なんて、あたしには見向きもしなかった。
昨日何もなかったかのように。ごめんの一言もないんだから。