かわいい王子VS鈍感な姫

「郁ちゃん!氷!」


良平が言った。


しかし、郁からの応答がない。


不審に思い郁を見てみると、手に持っていたと思われるタオルを床に落とし、俺の方を見て固まっていた。


「郁ちゃん!郁ちゃん!氷持ってきて!早く!」


体育館に良平の声が響く。


「…あっ!うん!」


郁はやっと気付き、すぐに体育館を出た。


「七海、とりあえずコートの外に行こう。良平、一緒に七海の肩を持ってくれ。」


良平と先輩によってコートの外に行き座った。


俺は自分の足に目をやる。


良平と先輩にシューズと靴下をぬがされ、今は素足だ。


まだ腫れてはいない。


でも触ると痛みがある。


…ジャンプトスでねんざって…


中学3年間、ジャンプトスしても他のことをしても怪我なんてしなかったのに…。


みんなのスパイクを見てすごいなって思って…集中が足りなかった…。


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