綿菓子と唐辛子


「ど…、どうしたんだ、お前…」

箸の先に持っていた黄色い玉子焼きが、ボトリとお弁当箱に落ちた。


…あぁ。そっか。今はもうお昼休みか。


ヒメのことを考えてぼーっとしていたら、そんなにも時間は経過していたらしい。


目を見開いて、まるで変態を見るような目で俺を見ている勇哉は、俺がおかしくなったと騒ぎ出した。

勇哉が騒ぐことで、クラスの奴(男子)が数名集まってくる。


「ちょ、みんなヤベーよ。ナツがとうとう頭やられちまってる!」

「は、マジ?相坂さんにムラムラしてんの?それともゴジラ?」

「それはやべーな」


ワイワイ ガヤガヤ。


みんながヒメを話題にした。

セーフなことに、ヒメは教室にはいないみたいだ。こんなことで騒がれているなんてアイツが知ったら、暴れまくるに決まっている。


「やー、でもさ、お前ならあんな女じゃなくてもいい女は見つかるって、夏那」


……ん?


「そーだよ。なんでよりによってあんなゴジラ女を…」

「あー、あのゴツいシャーペンだろ!?あれはやばいって」



ぎゃははははは…


男たちの、デリカシーのない話。クラスに響く笑い声。


「…」


この話をヒメが聞いたら、どんな顔をするのだろう。

想像してみたけど、心臓が苦しくなったからやめた。



「あいつは…」


俺がくるしいんだから、アイツは、もっと。


「んー?どうしたナツ」



……。



「あいつは、可愛いよ」


俺が知ってるヒメは、そういう女の子なんだ。



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