綿菓子と唐辛子


「あ、ほら、お前がそう言うから、相坂帰ってきたぞ」

「んー……」


南とお昼を食べてきたのか、空になってるであろうお弁当箱を持って帰ってきたヒメ。

…こう見ると、普通に可愛い女の子なのにな。

みんなはきっと、始業式のジャージ姿のイメージしかないのだろう。あの時のヒメは本当に衝撃的だったから。

南と二人で話してるヒメを、伏せている顔の隙間から見ていた。


ゴジラシャーペンのこととか、ゴキブリのこととか、ろくでもない思い出が蘇ってくる。

でも、そのときどきで、色んなヒメを知った…かな。


「お前にとっては、可愛いの?あれ」

「……うん…、可愛いね、すげー可愛い」

「そんなお前が可愛いよ、俺は。初恋かよ」


ヒメが可愛いってことは、俺だけが知ってればいい。

そう思うのは、やっぱり、俺がヒメを好きだってことなんだろうか。今まで、可愛いなーとか、いいなーとか思う子たちがいなかったわけじゃなかった。


でも、ここまでギュッと心臓を掴まれたような感覚になるのは、ヒメが初めてだ。




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